情報工作と外交の両分野で長く米中関係にかかわったリリー氏は、中国国内の反仏デモや、米国内の中国人留学生による民族主義的な行動の激しさを「文化大革命(66〜76年)を思いだす」と憂慮。こうした反応が「教育システムの所産だ」として、江沢民政権当時の90年代半ばに始まった「愛国主義教育」の影響を指摘した。
欧米での激しい抗議を踏まえて、タイでの聖火リレーが親中国系の人垣に囲まれていたことを挙げ、リリー氏は「中国の少数民族問題に敏感な東南アジアの感情を考えれば、タイが本当に満足していたとは思えない。民族主義的な動きはホスト国の懸念を招くだけだ」として、中国側の対応に懸念を示した。
フランス資本の大型スーパーを狙ったデモなど、民族主義的な行動の行方については、「広がらないことを望むが、五輪を控えた熱気を考えると、神のみぞ知るとしか言えない」と発言。長野での聖火リレーへの反応も、日本側での抗議状況によっては、「報復を予想しておくべきだ」と語った。
聖火リレーへの抗議行動を招いたチベット問題について、リリー氏は、(1)中国側は騒乱鎮圧を正当化する宣伝活動を強化する(2)ダライ・ラマとの対話に関して、中国側は高位級代表との接触を視野に、対話の是非や実現の時期を検討している−との分析を示した。
また、ブッシュ米大統領の北京五輪出席については、「チベットでこれ以上の暴力が起きなければ、大統領は既定方針のまま動くだろう」と語った。
やはり仏教僧のデモが武力弾圧されたミャンマー問題で、米政府は軍事政権への制裁を強化する一方、チベット問題ではダライ・ラマとの対話を中国側に促す説得にとどまっている。
この対応差を「二重基準」とする批判について、リリー氏は「人権問題は米中関係の一部。中国との総合的な関係は、ミャンマーとの関係より千倍は重要」と述べ、「民主・人権」といった価値観も、結局は「国益」とのバランスで判断される外交の現実を指摘した。
リリー氏は米中央情報局(CIA)出身の中国専門家。蒋経国時代の在台米国代表(大使)、駐韓大使を経て、中国駐在大使として天安門事件後の米中関係処理にあたった。米AEI研究所上級研究員。中国・青島出身、80歳。
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